UIは、人とプロダクトの間に生まれる対話である
機能、見た目、使う流れを一つの体験として考える
UI/UXを考えるときには、さまざまな切り口がある。
必要な機能や業務要件から考えることもできる。
画面の見た目や表現から考えることもできる。
ユーザーが目的へ到達するまでの流れから、全体を考えることもできる。
どの切り口も、設計には必要である。
しかし、実際のプロジェクトでは、それぞれを別々に考えるほど、全体を一つの体験へまとめることが難しくなる。
要件から考えると、できることを並べただけの画面になりやすい。
表現から考えると、美しくても使う人への配慮が足りない画面になりやすい。
流れだけを整えても、一つひとつの場面で、ユーザーが何を理解し、どう感じるのかが見えなくなることがある。
機能、言葉、見た目、動き、画面遷移を、同時に一つの体験として考えるには、それらを束ねる共通の視点が必要になる。
私は三年ほど前、さまざまな設計判断を一つにつなぎ、的確な判断を導きやすくする考え方があることに気づいた。
それが、UIを「対話」として設計するという方法である。
アプリを通して、ユーザーと対話する
UIを対話として設計するとは、スマートフォンやアプリを通して、提供者自身がユーザーと対話しているかのように、一つひとつの場面を考えることである。
ユーザーがアプリを開いたとき、最初に何を伝えるのか。
ユーザーの状況を理解するために、何を尋ねるのか。
選択が必要なときに、どのような選択肢を差し出すのか。
次の場面へ進む前に、何を理解してもらうのか。
ユーザーが迷ったとき、どのように助けるのか。
目の前に一人のユーザーがいて、自分がその人と話していると考えながら、これらを一つずつ決めていく。
すると、どのタイミングで何を伝え、何を尋ね、どこで次の行動へ導くべきかが見えやすくなる。
スマートフォンやアプリの画面を通して、ユーザーは提供者からの案内を受け取り、問いかけに答え、自分の行動に対する応答を受け取る。
UIとは、その一連の対話を成立させる接点なのである。
色や動きも、対話の一部になる
ここでいう対話には、画面に表示される文章に加え、色や形、動きも含まれる。
言葉を一切表示しなくても、UIはユーザーへ何かを伝えている。
ボタンが目立つ場所に置かれていれば、「次はここを押してください」と伝えている。
選べない項目が薄く表示されていれば、「今はこの操作を行えません」と伝えている。
処理中の動きが表示されれば、「いま対応しているので、少し待ってください」と伝えている。
操作が完了したときに画面が変われば、「あなたの操作を受け取り、次の状態へ進みました」と応答している。
色、形、配置、余白、動き、音、振動も、すべて対話の一部である。
操作前には何ができるかを伝え、操作後にはその結果を伝える。それらが、言葉とともに一連のやり取りを支えている。
ユーザーが行った操作に対して、プロダクトがどのように反応するのか。
その反応によって、ユーザーは自分の意図が伝わったのか、次に何をすればよいのかを理解する。
対話設計では、プロダクトがユーザーの行動や状況をどのように受け取り、何を返すのかを、言葉や見た目、動きを含めて考える。
窓口の担当者として、画面を考える
対話としてUIを考えるときには、店舗の受付や窓口の担当者を想像すると分かりやすい。
優れた担当者は、来店した人の様子を見ながら、その場で必要な説明から始める。
まず、何のために来たのかを確かめる。
必要に応じて選択肢を示し、相手の答えを受け取る。
その人の状況に合わせて、次に必要な案内を行う。
重要な判断の前には、必要な情報を伝え、理解できているかを確かめる。
問題が起きれば、何が起きたのかと、次にどうすればよいのかを落ち着いて案内する。
画面も同じである。
どの場面で、次の画面へ導くのか。
いつボタンを見せるのか。
どの選択肢を、どの順番で出すのか。
一度にいくつのことを尋ねるのか。
どの段階で説明し、どの段階では説明を省くのか。
窓口で人が応対していると考えると、こうした判断が具体的に見えるようになる。
画面での応対を人との会話に置き換えると、次のような不自然さが見えてくる。
会った瞬間に大量の情報を読み上げる。
答える前に、次々と質問を重ねる。
相手が困っているのに、理由を説明せず「エラー」とだけ伝える。
選択肢の違いを説明しないまま、判断だけを求める。
UIでも、相手が理解できる量と順序で伝え、答えを待ち、必要な説明を添えることが大切なのである。
一つの画面は、一つの応答である
一つひとつの画面は、前後のやり取りをつなぐ役割を持つ。
ユーザーとプロダクトの対話の中で生まれる、一つの応答である。
その画面が表示される前に、ユーザーは何をしたのか。
何を期待し、どのような答えを待っているのか。
その期待に対して、画面は何を返すのか。
そして、その応答を受け取ったユーザーに、次に何をしてもらうのか。
この前後のつながりを考えることで、画面に必要な情報が決まる。
必要なボタンの数も、言葉の内容も、選択肢の見せ方も決まる。
動きや音を使うべき場面も見えてくる。
たとえば、ユーザーが情報を送信した直後の画面なら、まず「受け取った」という応答が必要になる。
さらに、処理が完了したのか、まだ続いているのか。
次に何か行う必要があるのか。
いつ、どのような結果が返ってくるのか。
対話として考えれば、ユーザーが待っている答えから、伝えるべき内容を導くことができる。
送信した人は、画面から受付の状態と次の見通しを受け取ることで、連絡を待てるようになる。
対話として考えると、設計判断が一つにつながる
対話として考えると、その場でユーザーが知りたいことと、次にしたいことから、必要な情報や機能を選べる。
何を伝え、いつ尋ね、どう応えるかを決めることで、画面の流れや言葉、見た目、動きも一つの体験として揃っていく。
最高の対話が、優れたUI/UXをつくる
ユーザーから見れば、画面の向こう側には、プロダクトを提供する人や企業がいる。
ユーザーは画面を通して、提供者の考え方、態度、配慮に触れている。
つまり、UIは、ユーザーと提供者の間に生まれる対話である。
スマートフォンやアプリは、その対話を媒介する。
丁寧な対話は、相手が知りたいことを、必要なタイミングで伝える。
相手の行動を受け取り、理解できる形で応答する。
迷っているときには助け、重要な判断を急がせず、次に進める状態を作る。
優れたUI/UXも同じである。
画面を作るときには、美しさや情報の充実に加えて、ユーザーがそこで何を理解し、どう感じ、次の行動へ進めるかまで考える。
もし自分が目の前でユーザーへ応対していたら、この場面で何を伝え、何を尋ね、どのように次へ導くのか。その問いから、機能、言葉、見た目、動き、画面遷移の判断を一つの対話へつなげていく。
UI/UXの設計は、提供者とユーザーの間に、自然で分かりやすく、思いやりのある対話を作ることである。