UI/UXの本質9 / 16

一貫性とは、プロダクトがユーザーとの約束を守ることである

約束した価値を届けるには、一貫性が必要である

プロダクトを使う前から、ユーザーは説明や見た目を通して期待を持っている。

何ができるのか。

使うと、自分の生活がどう変わるのか。

その期待をもとに、使い始めるかどうかを判断する。

たとえば、「自分のペースで学べる」と伝える学習サービスがあったとする。

その言葉を見た人は、忙しい日には休み、時間のある日にはじっくり学べると考えるだろう。

この言葉は、生活に合わせて学習を進められるという、ユーザーへの約束である。

その約束を実際の体験にするには、学ぶ時間を選び、休み、再開するまでの流れを、同じ価値に沿って設計する必要がある。

伝えた価値を、ユーザーが使う中で実感できること。そこに、プロダクトの一貫性が現れる。

機能が正しく動いていても、約束を破ることがある

この学習サービスに、連続学習日数を記録する機能があるとする。

学習した日は記録が増え、休んだ日には通知が届く。

記録が励みになる人もいる。通知があれば学習を続けやすい人もいるだろう。

ただ、その機能が「自分のペースで学べる」という約束にどう関わるかは、使う人の状況に置いて考える必要がある。

仕事が忙しく、今日は休もうと考えている人に、「連続記録が途切れます」と通知が届く。

その人は、記録を途切れさせないために、予定を変えて学習を始めるかもしれない。

連続記録は正しく数えられ、通知も設定した時刻に届いている。

それでも、ユーザーは、自分の時間を選びにくくなったと感じることがある。

自分のペースで学ぶためのプロダクトが、自分のペースで学ぶことを難しくしている。

だから、一貫性を確かめるときには、機能の動作と、その結果としてユーザーに生まれる体験を、合わせて見る必要がある。

同じ連続記録でも、目指す価値が違えば、適切な設計も変わる。

約束した価値を基準に、機能を設計する

ここで、思想とコンセプトを判断の基準として使う。

何のために存在するプロダクトなのか。その価値をどのような原理で実現するのか。

そこに立ち戻ると、新しい機能を考えるときにも、「この機能は、ユーザーへ約束した価値を実現するか」と問い直せる。

「自分のペースで学べる」という価値を守るなら、まず、何を学習の進歩として見せるかを考える。

連続した日数を大きく示せば、学ぶ人は、理解を深めることよりも記録を途切れさせないことを優先しやすくなる。

どこまで学んだかと、次に何をすればよいかが分かれば、休んだあとも迷わず続きを始められる。

通知は、本人が決めた時間に学習へ戻れるように使う。

同じ記録や通知でも、何を示し、いつ届けるかによって、学ぶ人の行動は変わる。

記録の見せ方、通知のタイミング、再開のしやすさは、別々の機能に見えても、「学ぶ時間を本人が選べるようにする」という同じ価値から判断できる。

約束した価値を、体験全体で実現する ユーザーへ約束した価値が、言葉・見た目・機能・振る舞いからなる一つの体験を通じて、ユーザーの現実になる。 ユーザーへ約束した価値 自分のペースで学べる プロダクト全体の体験 言葉 見た目 機能 振る舞い 約束した価値が現実になる自分の時間を選び、必要なときに学べる
約束した価値を、体験全体で実現する 約束した価値が、言葉・見た目・機能・振る舞いという一つの体験を通じて、ユーザーの現実になる。 ユーザーへ約束した価値自分のペースで学べる プロダクト全体の体験 言葉 見た目 機能 振る舞い 約束した価値が現実になる自分の時間を選び、必要なときに学べる

体験全体で、同じ約束を守る

ユーザーは、使い始めから使い続ける間まで、プロダクトのさまざまな振る舞いを一つの経験として受け取る。

その経験を通して、最初に伝えられた価値が本当に守られているかを確かめる。

ある場面で約束した価値を感じられても、別の場面で矛盾した振る舞いに出会えば、最初の約束そのものが揺らぐ。

作り手が機能や担当で仕事を分けても、ユーザーへの約束は分けられない。

どの場面でも同じ価値に沿って判断を重ねることが、体験全体の一貫性になる。

一貫性とは、ユーザーとの約束を守り続けることである

プロダクトは、使う前に価値を伝え、使う中でその価値を届ける。

ユーザーが受け取る説明と、実際に起きることが揃ったとき、ユーザーとの約束が守られる。

そのために、ユーザーの状況や使い方を見て、価値が届いているかを確かめ続ける。

目指した体験とのずれが見つかれば、制約や機能、振る舞いを見直す。

一貫性とは、プロダクトがユーザーへ伝えた価値を、関わる時間全体を通して実現し続けることである。

ユーザーとの約束は、機能や振る舞いだけでなく、画面の案内文やボタンの文言、エラーメッセージにも現れる。

次の節では、ユーザーが日々触れる言葉遣いを通して、提供する側の考え方や態度がどう伝わり、プロダクトの人格として受け取られるのかを考える。