二十年後も変わらないUI/UXの本質
作り方が変わっても、問いは残る
UIもUXも開発も、やがて今よりはるかに短い時間で作られるようになるだろう。必要な機能、言葉、動き、コードまでが、一つのプロダクトとして生成される。
この本では、作り方が変わったあとにも、何を起点にし、何を基準に選ぶのかを考えてきた。
まだ存在しない未来を思い描く
私は、AIが進化した先でも、人間が、まだ存在していない未来を思い描き、作ろうとする力には価値があり続けると考えている。
もちろん、未来を考えることにもAIは力を貸してくれる。
このようなものがあればよいのではないか。
この方向へ進めば、これまでとは違う体験を作れるのではないか。
AIは、多くの可能性を示し、人間だけでは思いつかなかった案を生み出すようになるだろう。
その可能性を前にしたとき、人間自身が何を実現したいと感じるかも、未来を選ぶ大切な手がかりになる。
まだどこにも存在しないものを作りたいと思うこと。
目の前にいる人を見て、もっとこうなればよいと感じること。
自分自身の感覚から、今とは違う状況を思い描くこと。
その小さな気づきが、未来の体験を作る最初の一になる。
制約の中に、新しい調和を見つける
創造するときには、あらゆる可能性の中から、あえて制約を選ぶ。
誰のために作るのか。
何を大切にするのか。
何をするのか。
そして、何をしないのか。
制約によって可能性が絞られると、そこに初めて、そのプロダクトだけの輪郭が生まれる。
限られたもの同士をどのように組み合わせれば、一つの体験として調和するのか。
何を足し、何を減らせば、機能、言葉、見た目、動きが同じ方向を向くのか。
そのバランスを見つける視点も、創造力の一部である。
自ら選んだ制約の中で、機能、言葉、見た目、動きの関係を考え、新しい調和を見つける。そうした判断から、未来の体験は形になっていく。
今この瞬間の人間を、見続ける
未来の体験を考える手がかりは、人が今この瞬間に感じていることの中にある。
目の前にいる人は、何をもっと良くしたいと思っているのか。
いま使っているものに、どのような違和感を持っているのか。
どのような体験を味わいたいと感じているのか。
そして、自分自身は、何を見て、何を感じ、もっとこうなればよいと思っているのか。
ユーザーを観察することと、自分が行っていることを観察すること。
そこから、まだ言葉になっていない小さな変化を見つけること。
新しい体験は、日々の観察や気づきの積み重ねから生まれる。
今ここにいる人間を見つめ、その人がまだうまく説明できていない感覚に気づくことが、その出発点になる。
今この瞬間に起きている変化を見つけ、そこからどの未来を作るかを考える。その営みを、人間はAIの力も使いながら続けていくのだと思う。
思想が、すべての始まりになる
この本の冒頭で述べたように、プロダクトは思想から始まる。
そのプロダクトは、なぜこの世界に必要なのか。
誰に、どのような状況を生み出したいのか。
何を大切にし、どのような未来を目指すのか。
その思想があるから、作るべきものを選ぶことができる。
思想は、制約によって形になる。
制約があるから、そのプロダクトが何を担い、何を担わないのかが明確になる。
その中から存在意義が見つかり、コンセプトが生まれ、機能、言葉、見た目、動きへとつながっていく。
そして、それらすべてが一つの方向を向いたとき、人の中に一貫した体験が生まれる。
AIがどれほど高度になっても、誰にどのような価値を届けるのかという問いの重要性は変わらない。
AIが原理原則を学び、思想から制約を導き、より優れた体験を提案できるようになる未来は来るだろう。
その提案を前にしたときにも、私たちは、届けたい価値をもとに進む方向を選んでいく。
思想が制約を生み、制約の中からデザインと体験が生まれる。
それが、二十年後も変わらないUI/UXの本質である。
AIとともに、これからの体験を考え続ける
この本では、AIがUIを作れる時代に、人間に何が残るのかを考えてきた。
作ることが簡単になるほど、何を作らないかを決める力が必要になる。
AIが多くの可能性を生み出すほど、最初に与える思想と、その後の判断が重要になる。
そして、制作が速くなるほど、人間を理解し、まだ存在しない体験を構想することの価値は高まっていく。
AIによって、UI/UXやデザイン、クリエイティブのあり方は、これからも大きく変わるだろう。
使う道具も、作り方も、必要とされる技術も変わっていく。
私自身も、AIを使いながら、新しいUX、新しいデザイン、新しいクリエイティブがどのように生まれるのかを、これからも実践し、考え、発信していきたい。
AIの進歩を見つめながら、人がいま何を感じ、どんな体験を求めているかも考え続ける。
そして、AIの力を使って人にどのような体験を生み出せるのか、実践の中で確かめ続ける。
技術が変わり続ける時代だからこそ、変わらない原理を持ちながら、まだ見たことのない未来を作っていく。
その未来を、誰かの日常が今より少しよくなる体験として届けたい。
人を理解し、思想を持ち、AIとともに作り続ける。私はこれからも、その思いを一つひとつのプロダクトに込めていきたい。